地域企業魅力発信
インタビューシップ

京都府の企業

2017/03/31

こと京都株式会社 (平成28年取材)

 

こと京都とは

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 もともとは、野菜を生産する年商400万程の農家だったが、現在では九条ネギを中心とした展開により、年商10億円を超える規模の株式会社に成長した。加えて、九条ネギ以外にも、2003年からは南丹市美山町で卵事業を、2015年からは米事業を開始している。同社は九条ネギを「生産」するだけでなく、「加工」、「販売」までも行う、農家では珍しい6次産業の会社である。 “6次産業化”とは、どのようなことかご存知だろうか。6次産業は、「1次産業」である農林漁業者が、農畜産物・水産物の生産だけでなく、「2次産業」である食品加工、「3次産業」である流通・販売にまで踏み込むことである。農産物などの生産物が本来持っている価値をさらに高め、農林漁業者の所得を向上していくことが期待される。今回は、6次産業化の成功例として、2013年に農林水産大臣賞を受賞した、こと京都の魅力について取り上げる。

こと京都では、ただ九条ネギを生産するだけでなく、その生産方法にもこだわりを持っている。同社では、産地リレーを行い、九条ネギを生産している。産地リレーとは、京都府内の各地の気候をうまく利用して、1年を通して九条ネギの栽培を行うことである。何月から何月は〇〇、何月から何月では××で九条ネギを栽培することで、安定した栽培、生産が可能になる。肥料は、有機質肥料を使用することで、農薬や化学肥料をできるだけ減らしている。それだけではなく、循環型農業として、ネギの残渣を自社が経営している養鶏場の鶏たちの餌として使用し、その鶏の糞を九条ネギのたい肥として再利用するなど、環境に配慮した取り組みにも力を入れている。また、お客様により安心・安全な商品を手に取ってもらえるように、産地証明もしっかりされている。産地証明では、「いつどこで栽培されたか」だけではなく、もし農薬を使用したなら、「いつ、何回使用したか」までも情報として残っている。 丹精込めて育てられた九条ネギは、製品の安全を確保する衛生管理の手法であるHACCP法を導入した横大路工場にて加工される。カットねぎだけでなく、ドレッシングや乾燥ネギから九条ねぎのポタージュやカレーなどのユニークなものまで、商品の種類は豊富である。

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会社名 こと京都株式会社
資本金 2,100万円
従業員数 136人
男女比 70名(男)、66名(女)
業種 農業
平均年齢 32歳
平均勤続年数 3.8年
離職率 5%
有給休暇の取得率 30%
モデル年収 400万円(32歳・役職リーダー・勤続5年)
初任給実績 182,700円(大卒)
年間休日数 104日
月平均残業時間 40時間
採用実績(人)
 2014新卒 3
 2015新卒 3
 2016新卒 6
 2014中途 4
 2015中途 3
 2016中途 4
最新の障害者雇用率 2.2%

農業=男性?こと京都の女性の働き方

“農業”というと、どのようなイメージがあるだろうか。「男性が多い?」「女性は活躍しづらい?」といったイメージを持っている方も多いと思われる。こと京都は、そのような農業の職場に対するイメージに反し、女性が活躍できる労働環境が整っている。「女性としての能力や個性が活かせる場があり、男性からも任せられている面があると感じられる職場」、広報の山田紗矢香さんは同社の労働環境についてそのように話している。
同社で女性が活躍する場は、主に「広報部」「営業・管理部」「加工部」の3つである。6次産業化においてこれら3つの部署は“付加価値”を生む場であり、女性の力や能力が必要だとしている。例えば、些細なことでも拾い上げたり注目したりすることに関して、女性の方が幅広くアンテナを張っている。そういった面で女性のセンスが企業イメージの向上にも繋がっているという。
女性が一番多い部署である加工部では、女性が作業をしやすいように、重労働業務等の労力を軽減する機械の導入や更衣室・シャワー室を設置するなどの労働環境の整備が行われている。「現場で働く人の声を取り入れて応えることが、女性だけでなく、男性も含め一緒に働く従業員が気持ちよく働ける職場づくりになっている」との山田さんの言葉から、“こうなったらいいな”という社員の声が届く風通しの良い職場であることが分かる。また、男女共に従業員の希望に従って、正社員やパートといった勤務形態を選択することができるのも魅力である。2015年には、「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選」(“WAP100”)に選定、表彰されている。整備されたストレスのない環境や柔軟な勤務体系によって、最大限の能力が発揮できるのだろう。

人間性を高めてくれる仕事場

同社では、働きながら人間性を高めることができる様々な取り組みが行われている。その1つが、月に1回行われる“木鶏会”という、月刊誌『致知』の読書会である。くじで4人程のグループをつくり、膝を突き合わせて感想文を読み合い、互いを褒める。普段、顔を合わせる機会が少ない部署の人と交流することができる場だという。「苦手だなと思っていた人の良いなと思う一面が発見できる」。そう話すのは、加工部部長の鳴海多津男さん。「終わった後のフリートークが盛り上がる!」という話からも、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。木鶏会を通してコミュニケーションをとることで、他部署の人を知るきっかけや自分の考えが変わるきっかけにもなる。仕事でのやり取りも円滑になり、人間関係の良さ、社内の雰囲気の良さに繋がっている。

そして、「些細なことでいいから、こと京都が日本一と誇れるものを持とう」というコンセプトで始まったのが“日本一シリーズ”だ。テーマを毎年決め、それに向けて社員全員で実践していく。例えば、あいさつ日本一や笑顔日本一、掃除日本一のようなテーマがこれまでに実施されている。この日本一シリーズを行うことで、社内の雰囲気は明るくなり、とても良くなったという。実際に、私たちが数日間こと京都へ訪問させていただいた際にも、会社内ですれ違った方や工場内で出会った方は、皆さんがとびっきりの笑顔で「おはようございます」「いらっしゃいませ」とあいさつをされていて、とても気持ちが良かった。
今後は、社員同士の相互理解をさらに深めるため、人間を4つの大型類人猿の特徴に当てはめた性格分類である“類人猿分類法”の導入が進められていくとのことだ。「この人はこういう人なのか」と相手の理解だけでなく、自分自身についても理解が深まるという。同社は、人間力を高めていくための能力育成支援が充実している。就職活動を控えた学生に対し、「 (これからたくさん吸収していける)真っ白の状態で入ってきたらいい」と鳴海さん。入社してからも、自分自身が仕事に関する知識や人との接し方など、どんどん吸収していくことで、仕事の能力も人間性も高められる会社である。

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