社長の人材活用日記
地域の中小企業における人材の採用や活用事例について、成功や苦労の裏話なども交えながら、社長の活動内容を日記スタイルで御紹介します。
福井県の企業
キョ―セー株式会社
【会社概要】
キョ―セー株式会社
本社/越前市妙法寺町29号2
設立/1956年6月
代表者/代表取締役社長 春田憲一
事業内容/住宅部材、家電部材、各種産業部材、家具部材など各種合成樹脂の成型加工及び関連部材の販売
資本金/1億4000万円
従業員/251人
電話/0778-23-1234
URL/ http://www.kiosei.co.jp/
1)会社紹介 暮らしの中のプラスチック部材を「押出成形」で製造。
「求めるのは、向上心を忘れず、みんなで力を合わせて取り組める人材」キョ―セー株式会社 春田憲一社長
私たちの身の回りには、部分的にプラスチックが使われているものがたくさんありますよね。わが社は、この「部材」と言われるプラスチック製品を作っています。例えば窓枠やドアの一部、照明カバー、コンビニ棚のプライスカードを差し込んであるケース…、エアコンの室外機の台や漁船のレーダー探知機のカバーなどもそう。軽くて耐久性があり、さまざまに形を変えられるプラスチックの特性を生かし、主に「異形押出成形」という方法で、お客様の要望に沿った部材を提供しています。
うちは自社商品として流通に乗るものは1割以下で、ほとんどがメーカーからの発注により製品を作って提供する、OEM生産です。でも言われた通りに作るだけではなく、よりよい性能やコスト削減などのアイデアも提供する「提案型企業」。だから最初に、材料の樹脂選びから成形まで担当する技術部門は重要です。そしてそれをお客様に伝える営業部門や製造部門の役割も大きい。また現在、ほとんどのメーカーは在庫を持たず、必要な分だけ発注し即納品というのが常識です。期限に遅れればアウトですから、物流や製品の管理部門も大切。すべての部門が協力して「キョーセー」があるんです。
ショールーム(本社内)
照明カバーや窓枠など「異形押出成形」技術で作られる製品サンプル(ショールーム内)
最終製品イメージ(窓枠)
最終製品イメージ(照明カバー)
2)わが社の人材採用方針 必要なことは入社してから鍛える。向上心と粘り強さがあればいい。
製造系の会社だから「理系でないとダメ」なんて思ってませんか? 募集する職種によっては理工学系の学校を出た方が多く受けに来られるということはありますけど、基本的には関係ない。持っていてほしいのは運転免許ぐらいです。仕事の知識や技術などは入社してから覚えてもらえばいい。そのために、学生さんには入社後6カ月間の研修カリキュラムを用意しています。この仕事でモノになるまでには、誰だって3年から5年かかります。大切なのは、その間、そしてそれ以降も、粘り強く仕事に取り組みスキルアップができるかどうか、です。結局仕事は同じことの繰り返し。その中で楽しみを感じられるようでないと。求めるのは向上心を忘れない人、そしてやはり仲間と協力できる、コミュニケーション能力が重要ですね。
ところでうちは、オーナー会社ではありません。私も一般社員として入社した、『雇われ社長』です。頑張って実績を積んでいけば、取締役や社長の道も十分あるわけです。管理職のスキルアップ研修も整っていて、年齢よりも実績や能力を重視していますから、やりがいはありますよ。
3)わが社の採用活動 将来の発展を考えて、若手を積極的に採用。
わが社は今まで中途採用が結構多かったのですが、今後は学卒者の採用を充実させていきたいと考えているんです。企業としてより発展していくために、各年代の人材を切らさず揃えることと、特に技術の伝承という点で、優秀な若手にぜひ来ていただきたい。実は「異形押出成形」という技法は、小さなねじれや反りなどを出さずに均一な製品を製造するためには、原料や機械の扱いなどの部分でコツがありまして。その人の経験値が大きく物を言う、ちょっと職人技的なところがあるんですよ。この技術を切らさずに伝えていくことが、会社の発展には欠かせないと思ってます。
それで近年は、ホームページや媒体などへの採用情報掲載に併せ、県内4大学での企業説明会に参加したり、弊社工場での会社説明会、地元の工業高校生を招いての工場見学会など、年間を通じて若い方に直接お話する機会を設けています。会社の知名度アップのために、テレビCMも放送しています。何しろ社名の入った製品が市場にないので、まずは社名を知ってもらわないと…。
県外での企業説明会は、昨年12月に近畿経済産業局の地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業を利用して、大阪の「就活ソニック」に参加させてもらいました。うちは、9割がた県内の人ですが、全国の営業所では現地採用の人間もいます。海外にも営業拠点があり、今後は東南アジアなどへの事業拡大も視野にあるので、英語や中国語などの語学が堪能な方や、留学生の方の採用も考えています。
4)成果 社内でイチから人材育成。福井でしっかりした人生設計を。
学卒者の採用に力を入れているのは、若い人たちにここ福井で、頑張ってもらいたいという思いがあるからなんですよ。うちは平均年齢37歳。社員の定着率もいい方だと思います。女性の活用にも積極的で、県の「ふくい女性活躍推進企業プラス」の登録、「父親子育て応援企業」の認証なども受けています。仕事もプライベートも大切にしながら、しっかりと人生設計をしてほしい。その思いに応えられる環境はあると思います。
そういう意味で、これからも若い方の採用には力を入れていきたい。今年は参加できなかった中央会のマッチング会やジョブフェアなどにも参加したいですね。そして社内で、知識と技術を備えた人材を、きちんと育成していきたいと思っています。
本社工場
2006年、越前市松森町に開設した「日野物流センター」。それまで分散していた倉庫機能を一元管理できるようになりました。