社長の人材活用日記

    
  

地域の中小企業における人材の採用や活用事例について、成功や苦労の裏話なども交えながら、社長の活動内容を日記スタイルで御紹介します。

  

福井県の企業

2017/03/27

株式会社一本義久保本店

【会社概要】

株式会社一本義久保本店
本社/勝山市沢町1-3-1
設立/2000年2月(1902年12月創業)
代表者/代表取締役 久保格太郎
事業内容/清酒「一本義」「伝心」、本格焼酎、リキュール類の製造販売
資本金/1500万円
従業員/39人
電話/ 0779-87-2500
URL/ http://www.ippongi.co.jp/

 

【会社紹介】創業115年の蔵元 海外コンテスト入賞歴も多数

 

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「霊峰白山の雪解け水、奥越前の地で育つ酒米、雪深い寒冷な気候、この3つが無ければ一本義は生まれません」
一本義久保本店 久保格太郎社長

 

1902年に創業した、日本酒・焼酎・リキュールなどの酒造メーカーである当社。現在の年間販売量5,000石(900キロリットル)は福井県内トップシェアを誇り、全国新酒鑑評会をはじめ国内外のコンテストで多数の金賞を受賞しています。
商品の銘柄「一本義」は禅語に由来しており、「最高の真理、優れた悟りの智恵を究めた境地」という意味を持っています。福井の豊かな食文化を背景に「幅広い相性を持つキレ良い辛口酒」を造り続け、「おじいちゃんからお父さん、そして息子へ」というように世代に亘って愛され続けてきました。

ip-2.jpg小林一夫製造部長(左)「楽しい雰囲気の中にも、大切な酒造りの技術を習得しようと皆頑張っています」
村上義紀管理課長(右)「創業115年、伝統の酒の味を若い力とともに受け継いでいきたい」

 

【我が社の人材採用方針】酒が得意でない人にも能力を発揮できる場面がある

 

当社の醸造部門の新卒採用を定期的に行うようにしたのはこの10年ほど。これまでは、 伝統的に東北などからいわゆる「出稼ぎ」で来られている方が半分、通年社員が半分の構成で酒造りをしてきましたが、出稼ぎ職人たちの高齢化が進んでいましたし、出稼ぎという季節雇用のスタイルはいずれ続かなくなるのではという危機感もありました。そこで、地元を中心に酒造り職人として定期的に採用するようになりました。本年からは、全て通年雇用の社員で酒造りを行っています。酒造りを長く続けることを考えると、やっぱり若い世代がどんどん入ってこないといけませんね。

最初から酒造りができる人はいないわけで、かといって昔ながらの「技術は盗め・見て覚えろ」という人材育成は今の時代に合っていません。麹造りや米の蒸し方、酒搾りのタイミングなど、酒造りの仕組みとポイントはもちろん、今行う仕事がどういったゴールにつながっているのか、その先にどんな酒が出来るのかを納得理解できる理由を示して、上司と先輩社員が教えることが大切だと感じています。ゴールの共有が仕事を覚え、また仕事に意欲を持ってもらう鍵になっていると思います。

「お酒好きの方が向いてますか?」と聞かれることもありますけど、実は蔵人にも体質的にアルコールの飲めない社員もいます。人の個性って面白いもので、アルコールを飲む飲まないは関係なく、特定の嗅覚や味覚が元々敏感であるということはよくあり、また学習することで不得意だった感覚も理解できるように育ちます。年2回行う社内テイスティング(酒を口に含むけど飲まない)は社員皆が能力を発揮しています。また日本酒は食事と一緒に楽しんでいただく飲料ですから、たとえお酒を飲めなくても、食べることに興味を持っている人には向いている仕事だと思います。美味しいものは人を幸せにしてくれます。当社の仕事は、お客様の食卓に幸せを提供するものづくりの現場なのです。

新入社員に求める素養というのは、どの会社でもさほど変わらないかもしれませんが、当社が求める人物像は、酒造りはチームワークと丁寧な仕事が大切ですから、元気があって、何事にも丁寧ひたむきに取り組む人です。技術は後から必ずついてきます。

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麹造り

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米の蒸し

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仕込み

 

【我が社の採用活動】中央会の支援をきっかけに県外出身の若者が入社

 

採用につなげたいと、3年程前に福井県中小企業団体中央会の人材確保・定着支援事業に応募。福井の中央会のご担当の方に「いい人がいたら紹介してほしい」とお願いしたところ、その後すぐのタイミングで福井県立大学から「食品のものづくりに興味がある学生がいるのだが」という相談がありました。大学では微生物の勉強をしていたそうで、愛知県から福井に進学して福井での就職を希望していると。こうした縁で昨年(2016年)に入社したのが、当社の古田です。
具体的に動きがあったのは2016年の3月の中ごろ。担当さん立ち会いで古田が会社訪問に来まして、会社説明や職場見学などを行い、その2週間ほど後に筆記試験と一次面接、数日あけて二次面接という流れで採否を判断することに。

この数年、二次面接には本人が肩の力を抜いて面接を受けられるよう、普段着で来るようにお願いしています。面接時間は限られたものですから、着慣れていないスーツに身を包んで話をしてもらうより、いくらかでもリラックスした環境で個性を少しでも出してもらい、こちらも汲み取れたらと思っています。

古田の結果は、全員一致で採用決定。本人の真面目な人柄というのもあったのですが、故郷の愛知を離れ福井に根を下ろして仕事をする彼の覚悟が窺えたことも大きかったと思います。
古田は就職後も福井市内から通う予定だったのですが、冬から春にかけての酒造りの時期は泊まり勤務もあったりするので、勝山市内に転居することになりました。まったく縁のない土地での就職ということで、会社としても生活面やメンタル面でのケアは大事だと考えています。
幸い、勝山出身で古田と同年代の社員が少なからずいるので、本人もあまり不安にならずに過ごせているようです。若い世代同士で「あいつがいるから僕も頑張れる」という意識で仕事に集中してくれているのは頼もしいです。

 

【成果】信頼おける綿密なマッチング 今後の成果にも期待

 

中央会のご担当の方から「学生・企業双方にとってミスマッチのないよう気を配っている」という話を聞いたことがあって、すごく安心できました。例えば、当社の醸造課長が福井ではなく山口県出身だという細かいことまで、何かのホームページで調べてもくださっていたみたいで。福井県外出身者が当社醸造の責任者をしていることを古田に伝えてくださったのも、古田が当社を志望する後押しになったと聞きました。

蔵人の人材確保はひと段落ついたので、今後は営業職の採用に力を入れたいですね。ただ、営業職での採用でも一定期間は可能な限り蔵に入ってもらおうかと。実際に酒造りに携わることで、商談などでも自分の言葉で自社商品の成り立ちをしっかり伝えられると思います。

今後の海外展開のことも視野に入れると、必須というわけではないのですが、英語や中国語などの語学力もあると望ましいかなと思います。現在当社は約20か国に向けて輸出出荷をしており、営業社員がそれぞれの国内担当に加えて海外出張を行いながら取引を拡大しています。今のところ海外での売上高は全体の1割未満ですが、今後ますます拡大していくと思います。

採用活動については中央会さん主催のイベントに継続的に参加しまして、2月の『FUKUI ジョブフェア』などに出展しました。2018年度新卒採用につなげられればと期待しています。

ip-6.jpg一本義久保本店の直売店内