地域のリーディングカンパニー

地域を代表する中小企業に焦点を当て、人材の確保・育成に関する取組や事業活動の特徴について取材しました。

奈良県の企業

2017/03/02

株式会社MSTコーポレーション

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事業内容と沿革および事業上の強み

株式会社MSTコーポレーションは1937年、福岡にて創業した。戦前は産業機械や工作機械を、戦後は奈良へ移転し工作機械用のツーリングの製造販売を行っている。ツーリングとは金属加工を行う際に使われる工作機械と刃物をつなぎ、保持する役割を果たすものだ。国内で最初に開発製造したことで、パイオニアとしての意識も高く、「他社の真似をしない」「他社が持っていないものを作っていく」など製品へのこだわりは強い。そんな想いは社是である「個性と創造」から反映されたものだ。誰もがもつ二つとない「個性」、無限の可能性を秘めた「創造」。そんな想いからこの社是は生まれている。

 
そんなこだわりの想いから生まれた主力製品が「焼きはめ式」のツーリングホルダーだ。通常のタイプはナットなどで刃物を締め付けているが、「焼きはめ式」は熱による金属の縮小により締め付ける。これにより、ホルダーのスリム化や強い締め付けにより、ワークや冶具との接触を減らし精度の高い加工を可能にしている。また、 金属は大きな熱の変化により材質が劣化するため、材料自体を開発することで低温での膨張を可能にし、高温の熱による材質の劣化を防いでいる。こうした製品は航空機や医療器具など精密製品の製造業者から好評だ。

 
そんな製品の製造開発を支えているのが高い技術力であり、製造や物流部門などの無人化だ。国内外で多くの特許を持つ研究体制に加え、国家技能検定をはじめとした優れた技能を持つ従業員は多い。機械保全やマシニングセンタなど多種多様な分野で高い能力を持つが、特に研磨技術は高い。通常5μの精度を求められるものも、1μの精度に取り組むなど特筆されるものだ。また工場は毎年積極的な設備投資を行っており無人化などの先進的な生産体制を実現している。

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海外展開も積極的だ。現在は中国、韓国などのアジアをはじめ北米やヨーロッパへと積極的に展開している。現在は売上げの40%近くを海外販売が占めているが50%を目指している。また、ツーリングの事業のほかに最先端の設備によるグラファイト電極加工の請負にも力を入れており、タイ工場の開設(2015年)に伴い今後より多くの売上が期待されている。

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人材の確保定着に関すること(教育・研修など) 

「最大の経営資源は人である」との考えから、人材育成には力を入れている。一つの業務という枠にとらわれず、入社以降の様々な研修やジョブローテーションのほか、各種プロジェクトへの参加などを促している。これらは、業務だけでなく人間的な側面で成長を促すための仕組みだ。

特に研修制度は充実している。従業員は入社後3か月間で全ての職場を体験し、会社の仕組みや製品の理解、ものづくりの流れなどを学ぶ。その後は専門研修として半年から数年間と長い期間に亘って、職種ごとに研修を受ける。外部講師による設計や専門的スキルの向上を目的とした技術講習のほかに、週2回の英会話教室など、海外事業にも役立つ取り組みも盛んだ。海外出張研修では、製品の海外展示出展に直接関係ない部署の人間も参加が可能だ。展示会の終了後も、営業に同行し代理店や関連メーカーを訪問する。このように自部門だけでなく他部門の仕事や取引先を知ることで、新しい「気づき」が生まれ、その経験をあらためて自分の仕事へ反映させている。

外国出身者や女性、60歳以上の再雇用者も様々な部門で活躍している。営業部門では外国出身者が10年ほど前から海外販売や市場開拓を中心に活躍している。海外事業の中心である中華チームでは、その部署のリーダーは海外出身者が任されている。また、一般的には女性の活躍は少ない業界だが、MSTコーポレーションでは女性の積極的な採用を行い、販促プロジェクト部門(プロモーション)や管理部門を中心に各部門で活躍している。

特に販促プロジェクト部門は、現在は女性のみで構成されている。ここでは国内外の展示会の企画・準備・運営などを行っていて、営業活動において不可欠な存在だ。そして再雇用者の活用の取組みは独特だ。意欲があれば期間の上限は決められておらず、例えば事務の仕事では80代半ばまで働いていた方もいる。

このような活躍の背景には、国籍や性別、年齢(勤続年数)などで区切るのでなく、やる気や能力のある者には誰にでもチャンスや環境を与えるという考えが基本にある。評価制度にもそれが表れている。賃金体系は年功序列型ではなく成果給の要素を強く取り入れたものになっている。非常に細かい評価項目を設け、効率よく働き成果を出すなど、業績に貢献した場合は厚く報いる制度になっている。

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地域の産業・経済との関わりや地域に対する想い


九州時代から積極的な投資で斬新な生産体制を実現しており、モデル工場として認定を受けていた。奈良へ移転後もモデル工場に認定されている。そんな関係もあってか多くの大学からインターンシップの要望を、地元経済界からは工場見学の要請を受け入れている。また、奈良県の小中学校からも工場見学の要請が多い。見学は好評のようで、子供たちも無人のフロアーで作業するロボットを見て楽しんでいるようだ。

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【会社概要】

株式会社MSTコーポレーション
所在地 : 奈良県生駒市北田原町1738番地
URL : http://www.mst-corp.co.jp/
創業  : 昭和12年(1937年) 3月15日
資本金 : 7,000万円
代表者 : 代表取締役社長 溝口春機
従業員数: 280名
事業内容:
 マシニングセンタ用ツーリングシステム、複合加工機用ツーリングシステム、治具、測定器、
 メンテナンスツール、放電加工機用治具・ツールの開発、製造、販売