地域のリーディングカンパニー

地域を代表する中小企業に焦点を当て、人材の確保・育成に関する取組や事業活動の特徴について取材しました。

福井県の企業

2017/03/23

株式会社オーカワパン

 

お腹も、心も満たすパンを、
いつもおいしく届けるために。

業務内容・あらまし

 

−福井県内ではおなじみのパンです。

当社は福井県内の量販店にパンを卸し、長く愛され、喜んでいただいてきました。毎日の食卓で普段から食べていただいている「当たり前」のパンを作っています。今は県内に加え石川県や滋賀県の一部など、約140の量販店に卸しています。昔は120種類ものパンをそろえていましたが、今は40種類ほどに減らしています。代わりに定期的に新商品を提案し、お客様が飽きられないようにしています。ナンバーワン商品の「パン・ド・ミー」の取扱いや、御要望、ご好評などに、絶えず製法や中身、売り方も見直し、一年前よりもおいしいパンになるように取り組んでいます。おいしいパンに不可欠な自家発酵種をコントロールすることなど技術面の向上に努め、全国ブランドにはない「あって当たり前だけどなくなると寂しい」というようなパンでありたいと思っています。

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福井県内の食卓ではおなじみとなっているオーカワパンの商品。

 

−オーカワパンの良さはどこにあるのでしょう。

お客様にさりげなく良さを感じていただける企業でありたいと思っています。毎日の食卓でパンを手に取り、食べていただいているお客様のご要望にできるだけ応えられるような提案を続け、ずっと「オーカワパンの商品が食べたい」と求めていただけるようなパンを作り続けていくことが全てだと思っています。積極的に新規顧客を開拓する営業もしていませんが、パンを販売してくださっている取引先の量販店様と、互いに前向きな提案をし合いながらお付き合いしていける関係を築いていきたいと努めています。安心して食べていただけるパンを、安定してお届けできるように精一杯努力を続けてお客様に喜んでいただくとともに、量販店様にも売り上げの面でハッピーになっていただきたいと願っています。

 

商品製造・新商品開発

 

−魅力的な商品づくりの舞台裏を聞かせてください。

思いつきでなく、きちんと裏を取って、つまり売り上げや製造原価、労務原価などのデータに基づいて、お客様に買っていただける商品を開発しています。「こういう形で商品を作り、各現場でどういう手順で作業をして」というデータや製造工程を細かく記した規格書を作成し、それを月に二回の会議で厳しく精査して実行しています。決まったことを全員がやることで、製造の標準化、平準化ができ生産性が高まり、材料費や労務費の削減など経営面でも戦略的な視点が生まれます。

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よりスムーズに、よりよい商品を製造できるようにミーティングする従業員。

 

−現場の開発担当者の声も聞かせてください。

お客さんのニーズに合ったものを、仕入れから売り方までトータルに考えた商品開発を進める新しい部署で働いています。まずお客様からのニーズを踏まえて、求められている商品を探ります。できるだけ店頭でお客様の声を聞くようにして、それを商品開発にダイレクトかつ細やかに反映させていけることが、他社の商品と差別化できる当社の強みだと思います。それだけでなく、多くの店舗に卸す商品の品質をぶれなく安定して作り続けられるように。どの従業員が担当してもおいしくなる製法なども検討しなければなりません。特においしさや見た目など、お客様に直接訴えかけるところは手作業による部分も大きいので、何度も試作を重ねて作業の工程を考えています。(営業部MD課長・小泉朋由さん)

      

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ナンバーワン商品の食パン、パン・ド・ミーが焼き上げられる。  

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商品のパッケージもデザインの専門家の声を取り入れ刷新された。

 

−実際の製造現場ではどのようになっていますか。

昔は「人に作業が付いて」いて、この人しかこの作業ができない、この人がいないとこの商品が作れない、ということもありました。この人が担当するとおいしいというようなこともなくさないといけない。お客様に品質のぶれを感じられたらアウトです。こうした人に付いた作業をいかにゼロに近づけるかが課題です。今は「仕事に人を付ける」という視点で、規格書で決めた内容に基づいて、全員が同じ仕事をやる。ただし、その基準が間違っていないとは限らないので、全員でいい方法を探して、改善していくようにしています。 今年は「この人はまずフランスパン、次は塩パン」という風に一日の作業工程を管理するシステムを導入して、作業に悩まないようにしていきたいと思っています。従業員すべての時間を、お客様に喜んでいただけるようにするため、高い生産性とお客様満足度を追求していかなければ、と考えています。

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こんがりとおいしそうに焼き上がったパン。約40アイテムを展開する。  

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品質にぶれが出ないよう、作業方法は綿密に定められている。

 

経営戦略

 

−生産性を高める必要性はどこにありますか。

実は日本の食品製造業では、世界的にみて生産性が低い現場が少なくありません。そのしわ寄せが低賃金となっていました。そこを打破していければお客様の満足度が高まり、従業員の待遇改善につながります。実際に、経営や生産面の改善に取り組んで以来、給与は上げ基調できています。お客様、従業員、そして会社の三方がよしとなる道です。

−仕組み通りに仕事は回るのですか。

できない基準を押しつけても無理なので、10人中8人が達成可能な基準を定めています。最初は決めた通りの時間に進みませんが、徐々に時間通りに終わるようになってきます。基準通りいくように従業員が考えるようになってくれるし、考えられる人がほしい。当社では手の作業も多く入っています。たとえば目の前のパン生地を扱う時に、ただ右から左に持っていくだけでなく、よりおいしくきれいに、お客様に喜んでいただけるようにできる作業の仕方があるはずです。その方法を考えて工夫することで、作業をスムーズに進め、商品の付加価値も高めてくれるのだと考えています。

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製造工程では手作業も多いが、それがおいしいパンを生む。

 

 

仕事の楽しさ・やりがい

 

−営業職の仕事も特徴的ですね。

当社の営業部の社員は、担当店舗への商品の配送も自分で行います。毎日担当するルートの店舗にうかがって、売り場に焼きたてのパンを並べ、お客様とのふれあいも大切にして声も聞かせてもらいます。発注も(店舗側ではなく)営業担当者が自分でして、商品の並べ方など売り場のコーディネートもします。担当店舗を毎日訪問することで、店の担当者とのコミュニケーションも密になるため、企画の展開や売り場の確保などにも協力的に対応していただいています。担当ルートの売り上げを上げるためには自分で全部やらなければなりませんが、やりがいを持ち、楽しんで営業の仕事をすることができます。(営業部長・山口守さん)

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営業担当者は商品の配送や売り場のコーディネートも担当する。

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坂井市丸岡町にあるオーカワパンの本社と工場。

 

 

−職場の雰囲気はいかがですか。

とても風通しのよい職場だと感じています。新製品発売の時に担当部署はドタバタして大変ですが、そんな時のチームワークと団結力もあります。産休・育休明けには時短勤務を提案してもらって復職しました。好きな仕事ができるのは生活面の大きなモチベーションになっています。売り場に出て対面販売をしていた時には「ここのパンはおいしいね」とお客様に直接言ってもらえたのも、励みになっていました。(管理部・西田真弓さん)

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社内の会議室の壁にはパンのパッケージをプリントしたクロスが。

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以前は量販店の店頭を飾るポップの制作をしていた西田真弓さん。

 

 

社長から一言

 

−御社にとって今年はどんな年となりますか。

今年は会社が変われるか、変われないかの境目と考えています。給与と連動した人事考査を立ち上げる準備を進めていて、社内でのトレーニングプログラムの作成、シフト管理システムなどの新しい取り組みが連動していくようにしたい。毎年少しずつできることを増やし、達成感を得ながら会社の強みを広げていければと願っています。

ただこんな数字や生産性の話ばかりで、杓子定規な会社になっても面白くない。今年は何回か、中学校の文化祭的な乗りでの商品開発など、無茶なチャレンジもしてみたい。それでお客様が喜んでくれればよいし、加えてその無茶なチャレンジをしていく中でミスをすれば、今の会社の本当の実力を知ることもできる。そのミスを解決することで会社は強くなれるのではないでしょうか。

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お客様に喜んでもらうパンを作るための経営理念を語る大川恭史社長。


 

 

【会社概要】

株式会社オーカワパン
 本社   : 坂井市丸岡町猪爪2丁目501
 設立(創業): 1949年9月
 代表者  : 代表取締役 大川恭史
 事業内容 : パン類の製造、卸販売
 資本金  : 1200万円
 従業員  : 76人
 電話   : 0776(66)0237