地域のリーディングカンパニー

地域を代表する中小企業に焦点を当て、人材の確保・育成に関する取組や事業活動の特徴について取材しました。

和歌山県の企業

2017/03/02

アクロナイネン株式会社

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1事業内容と沿革および事業上の強み

 
1963年、自動車エンジンの修理・再生業として発足したアクロナイネン株式会社。道路事情の改善やエンジン機構、オイル等が改良されていくなか、将来の修理・再生業の衰退を予測し、いち早く製造業へと転換を図った。現在は小型エンジン用遠心クラッチやピストン、自動車用カムシャフトブラケットなどを中心に各種部品を製造している。特に草刈機や発電機などの農機具用小型エンジン部品の市場に強く、高い業績を上げている。

 

当時は自動車の急速な普及で部品メーカーはその対応に忙しく、比較的市場の小さな農機具用の小型エンジンに着目することはなかった。そこで、独自に小型エンジン向けの遠心クラッチを開発することでその市場に進出した。現在では90%ほどのシェアをもち、農機具メーカーにとって不可欠な存在となっている。

 
また、創業当時に習得したダイカスト鋳造は現在も会社を代表する技術だ。ブレーキの土台はアルミダイカストで作られており、再生業者として土台まで保証するためには自社での内製化が必要と考え習得したものだ。

その後、材料やその配合、金型など独自に開発した特殊な鋳造方法は、顧客より高い評価を受けている。特にピストンやクラッチはその高い技術を象徴するものとなっている。通常のダイカスト製法では空気が入りやすく熱による変形の恐れもあるため、ピストンはグラビティ製法により製造するのが一般的である。

一方でダイカスト製法は加工時間が大きく短縮できるため魅力的なものだ。そのため独自の製法を考え、7年の歳月をかけピストンの製造に成功している。複雑な形状のものや耐圧性を要する部品には高度な技術が必要になり、他社との差別化が図られている。

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海外展開についても早くから取り組んでいる。2001年に上海に進出したのを皮切りにタイ、湖州(中国)の3カ所に生産拠点を設けている。当時海外進出した日系メーカーは、現地での部品調達は品質水準やクレーム対応の面などから今以上に苦労しており、その状況に対応すべく進出したものだ。現地では実現できない技術・ノウハウを提供することで存在感を高めている。また、湖州では国内では行っていないタッチパネルの製造にも取り組んでいる。金型の不要な特殊な製法により、小ロットからでも生産できる。現在は主にカーナビ用のセンサーとして製造されており、今後期待される事業だ。

 
部品メーカーとして高い評価を得ている一方で、今後の目標は自社のブランド名のついた完成品の製造だ。「一朝一夕に実現できるものではないが自社ブランドの名称がついた製品を普及させるのが夢」と、従業員一同その目標に向かっている。

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2 人材の確保・定着に関すること

入社時から従業員をどう育て、キャリアを積ませていくか、キャリアパスの仕組みを構築している。製造業ということから、従来からスペシャリストの育成には力を入れている。外部から専門家を呼び勉強会を開催するなどして、競争力の高いその技術を維持強化することに余念がない。一方で定期的な部門間での異動や、ものづくりから経営のノウハウまでを学ぶカリキュラムを用意するなど、ゼネラリストの育成にも力を入れている。特に現在は創業期から会社を支えた従業員が定年を迎える世代交代の時期でもあり「意欲のある人にはチャンスは転がっている」と若い世代の活用を図りながらモチベーションの向上に努めている。従業員には「自分たちの子供を入社させたいと思えるような会社にしよう」と呼びかけ、改善意識を高めている。


また、和歌山県と和歌山市との共同出資によりウインナック(株)を運営している。ここでは重度障がい者を多数雇用しており、障がい者が自立を目指し自信と誇りを持って働けるよう努めている。重度の障がいを抱えていても、仕事への考えや取り組み姿勢は健常者と何も変わらない。そこで、仕事を細分化し障がいの程度により作業内容を変えることで、無理なく働ける環境を作っている。金型製作や部品加工など幅広く作業に従事しており、今ではグループ全体にとっても不可欠な存在になっている。従業員各自がやりがいを持ち、活き活きと働きながら事業へ貢献していることが評価され、2013年には経済産業省による「ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれている。

3 地域の産業・経済との関わりや地域に対する想い


創業の地であり、本拠地でもある和歌山に対しての想いは強い。例えば食品事業を担うグループ会社の(株)勝僖梅。創業時の目的は雇用の維持と特産品の活用にあった。田辺の工場ではクラッチを作っていたが、本社工場への集約化が計画された。実行された場合、田辺工場の従業員は距離的に本社での勤務が難しく、その雇用が問題になった。

「なんとか雇用を維持したい」との想いから検討を重ね、みなべ町の特産品である南高梅に目をつけた。当時200軒ほどの生産農家があり梅干しにしてスーパーに卸していたが、大きい梅は扱われていなかった。そこで大きな南高梅を活用し贈答用の梅干しとして商品化することで、既存の生産農家との競争を避けるとともに、自社の雇用維持につなげた。今ではグループの柱として立派な事業に育っている。

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【会社概要】

アクロナイネン株式会社
所在地 : 本社工場
      〒641-0036 和歌山県和歌山市西浜789-3
TEL : 073-424-8101
URL : http://w-ksk.co.jp/
設立  : 1968年2月21日
資本金 : 1億4,750万円
従業員数: 195名(単体) 1,015名(連結)
     (いずれも2015年11月現在、臨時雇用を含む。)
事業内容:
 小型エンジン用遠心クラッチ・ピストン・燃料コック等の製造、二輪用アフターパーツ(ブレーキシュー・ピストン)自動車用バックミラー・ガス・空調・電子・各種産業機械及び工作機械等の精密ダイカスト鋳造及び加工鉄系・銅系焼結合金による、各種機械部品の製造、タッチパネルの製造販売