地域のリーディングカンパニー

地域を代表する中小企業に焦点を当て、人材の確保・育成に関する取組や事業活動の特徴について取材しました。

兵庫県の企業

2017/03/02

音羽電機工業株式会社

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1 事業内容と沿革および事業場の強み

音羽電機工業株式会社は1946年に京都東山で創業した。清水寺にある「音羽の滝」は1200年の間、枯れることなく流れ続けている。「同じように会社も長く続くように」との想いからその名前をもらっている。創業以来、雷を探求し続け国内唯一の雷対策専門メーカーとしてその地位を築いてきた。主要製品である避雷器は信号機や鉄道車両、病院など様々な場所で使用されており、特にインフラを守る高圧用避雷器では国内トップシェアを誇る。

事業を支える強みとして3つの要素が挙げられる。避雷器の心臓部にあたる「セラミックスデバイス」、国内唯一の雷専門試験センターである「雷テクノロジセンター」、総合的な雷対策を目的とした「コンサルティング」だ。「セラミックスデバイス」は、技術力の高さを象徴するものだ。酸化亜鉛素子を焼結させたもので、通常は絶縁体だが、落雷による雷サージが侵入した時、導電体に変わりアースを通して放電させる。酸化亜鉛素子を形成する粉の研究から調合・焼結まで独自のノウハウを持ち、自社設計による生産設備により開発製造する。そのため、高い品質管理を行うことができる。また、低圧系から高圧系、電源系から通信系と、広範囲の用途に用いることができ、顧客に応じたカスタマイズが可能だ。電気機器や通信ネットワークを保護する低圧用避雷器、電源線やアース線からの侵入を防ぐ分電盤用避雷器、インフラ用の高圧避雷器といった幅広い製品を扱うことが可能となる。「雷テクノロジセンター」では世界最大級の大電流試験設備をはじめ、高電圧試験設備や宅内サージ検証用模擬家屋など様々な試験設備がある。特に大電流試験設備は自社設計で開発したものであり、波形を変えることもできるため直撃雷や誘導雷など、より自然に近い形で再現できる。創業当時から試験設備にはこだわり、メンテナンスや設備の更新などには妥協することなく投資を行ってきた。その結果、高精度の評価試験が可能になり品質の改善や製品の開発、新たな市場の開拓へと繋がっている。「コンサルティング」では雷の侵入経路や被害状況を現地調査し、設備や建築物に最適な雷保護・接地システムの提案を行っている。その後の施工・メンテナンスを含めた一貫したサービスは顧客からも高い評価を得ている。
また、各方面からの受賞も豊富だ。経済産業省による「ネクストグローバルニッチ」や「ものづくり日本大賞」の選出をはじめ、電気保安に最も権威のある「渋澤賞」を何度も受賞している。これは雷に特化した創業以来の取組みや技術力が高く評価されたものだ。「極めることが大事であり、そのためには継続することが重要である。」ひとときの間だけ行うだけでは形としては残らない。形として残すためには継続していくことが重要だ。これは社員全員が共有する想いである。

 

2 人材の確保・定着に関すること

社長は新入社員に対し、「社員一人一人がそれぞれの持ち場で自己の能力を拡大させることが会社全体の発展を継続させてきた」と会社の歴史を語り、仕事には全力で没頭するよう心構えを説く。この背景には社是の「キラリと光れ」がある。「社員一人一人が自分の強みを持ち、社内・社外においてもキラリと光れるように」という想いを表したものだ。そのための取組みとして、家族的な雰囲気を大切にし、相談しやすい雰囲気を作ることでコミュニケーションの促進に気を配っている。例えば役職をつけずに名前で呼び合うことで心理的な垣根を除いたり、上司や先輩との会話では成功談や失敗談などを意識的に行うよう促している。また、教育制度として次世代を担う若手、中間層に対して階層別育成プログラムを導入している。事業創造のセンスを養う目的で行っているものだ。「自分たちで考え挑戦させたい」という考えのもと、経営会議は若手主導により進められている。先輩や上司など、上の年代はアドバイスに徹するなど個々の能力の育成を会社全体で取り組む土壌ができている。

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3 地域の産業・経済との関わりや地域に対する想い(地域貢献を含む)

社会貢献活動にも力を入れている。大阪科学技術館や姫路科学館(*1)ではブースを出展するなど雷に対する啓蒙活動を積極的に行っている。また、雷テクノロジセンターでは一般の方の見学も可能であり、小学生からシニア層まで全国から来場がある。特に学生は理科離れが進んでいると言われているので「雷はどんなものなのか、落雷による人や設備への影響はどのようなものか。雷に少しでも興味を持っていただければ」という想いがきっかけだ。また、今年で14回目を迎える雷コンテストも啓蒙活動の一環だ。多くのメディアから問い合わせがあり、毎年多くの応募がある。学術的に貴重な写真も見受けられるなど各方面で好評だ。「業績によって開催には厳しい時期もあったが、継続することに意義があると考え、今日まで続けています。」こんなところにも音羽電機工業の考えが見受けられる。

*1:「ピカッ!ゴロゴロ 雷の写真展」平成28年12月16日〜平成29年1月23日開催

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【会社概要】

音羽電機工業株式会社  OTOWA ELECTRIC CO., LTD.
本社所在地: 〒661-0021 兵庫県尼崎市名神町3-7-18
TEL  : (代表)06-6429-3541
URL  : http://www.otowadenki.co.jp/
設立   : 1946年(昭和21年)5月11日
資本金  : 8,190万円
代表者  : 代表取締役社長 吉田 修
事業内容 :
・電源用避雷器、信号回線用避雷器、電話回線用避雷器、耐雷トランス等の低圧サージ対策製品の開発・製造・販売
・高圧サージ対策製品の開発・製造・販売
・その他耐雷関連製品の開発・製造・販売
・エンジニアリング事業(外部雷・内部雷保護のコンサルティング、電気工事一式および保守管理)
・デバイス事業(各種デバイス製品の研究開発・製造・販売)